事業主貸と事業主借(2/2)

事業主貸科目は、経費になりませんが、事業主
借科目は、事業主個人のお金を仕事のためのに
出費したときなので経費となります。この科目
は頻繁に使用します。
仕事をすれば、いろいろな経費が発生しますか
ら、当然のようにお金が必要なります。
個人の場合は、個人用と仕事用のお金がいっし
ょになっており、個人のお金から備品や文具な
どを購入すれば、消耗品科目をつかいますが、
相手科目は事業主借となります。

あるいは、事業に必要な資金を生活費から事業
用口座に振り込んだとき、さらに個人用のクレ
ジットカードで事業用の事務用品を購入したと
き、さらに事業用の預金口座に利息が付いたと
きなどがあります。

私のように事業用口座をもたない場合、この科
目を頻繁に使用することになります。
法人の経理から仕訳業務を覚えてきた私のよう
な人間には、理解することがむずかしい科目か
もわかりません。
やよい青色申告のような会計ソフトがなく、帳
簿に記帳するスタイルなら、相当苦戦するとこ
ろでしょうか。
会計ソフトのおかげで仕事をさせていただいて
いるようなものです。

仕事で個人事業主さんの記帳代行をする予定は
なかったのですが、実際に記帳をおこなってみ
ると個人事業主さんの仕事における力強さに驚
いています。
その意味では、私にとって記帳以上に勉強がで
きています。

法人成りしたときの注意点

個人事業から法人へ転換したとき注意すべき点
があります。
個人事業時代のように、事業のお金と個人のお
金が併存していることに慣れてしまっていると、
法人(法人なり)へ転換したとき、同じような
感覚でお金の出し入れされている経営者をみる
ことがあります。

法人の前提は、個人から独立した存在です。
そのため、当然ですが、法人の財布と個人の財
布は分けて使わなければなりません。
預金口座は、法人名義になりますし、取引も法
人として行うことになります。

とくに、経営者本人のお金で会社の経費を支払
ったような場合、個人からみれば自分のお金で
会社経費を支払っていますから立替金となり、
法人からみれば、会社の経費分が個人に未払に
なっている状態です。

このようなケースで個人の銀行口座から会社経
費が支払われていたりすることが散見されます。
いくつかのやり方がありますが、しっかりと経
理をされているところでは、経営者の個人支払
分の経費明細を作成し、領収書を添付して管理
されています。
それをもとに、法人は経営者の個人負担分を未
払金として計上します。
また、私がみている範囲の企業ですと、大体、
法人用のクレジットカード(いわゆるコーポレ
ートカード)を作って経費精算されているとこ
ろが大半です。

法人成りしたとき、はじめから正しい経理処理
をしていれば、調査が入ってもきちんとした説
明ができますが、個人の口座から普通に法人の
経費が支払われているとなれば、問題となる場
合がでてくるでしょう。
また、このような経営をしているところに限っ
て、本来、経費計上できないようなものを計上
していたりします。

私は、このような経理処理をされている場合、
記帳代行をお断りすることにしています。
このような経営をされている方とは、論点がか
み合わないからです。
なにごとも、可能な限り最初から正しくおこな
っておくことが経営の第一歩です。

P/L、B/Sから見える身近な経営状況

仕事柄バランスシートや損益計算書を見る機会が多い
ので、企業や個人事業主の方たちの経営環境を身近に
知ることができます。

損益計算書から言えることは、コロナ化の経済情勢を
反映して売上が下がっていることです。
それでも中には、前年度の3倍近く売上を伸ばす個人
事業主さんもいます。

共通する経営活動ですが、売上を確保していくために
取引先の新たな開拓をやっておらることです。
このような方法で売上の減少幅を少なくする努力をさ
れています。
また、これまでひとつの案件の受注額が大きくなって
いましたが、当然、経営環境が厳しくなれば一件当た
りの受注額を下げて小さな案件、いわば受注額がこれ
までより低い案件を数多く受注することで売上の減少
を食い止めようとされています。

その点、飲食業は休業や時短営業などの国や都道府県
による政策に大きく影響されますから、自らの努力に
は限界があります。
他方、この業界は、まん延防止協力金など給付金、あ
るいは雇用調整助成金の支給があり、個人事業主さん
や小さな事業者さんは、当面事業継続のための資金は
なんとか確保されています。
しかし、なんといっても本当にお客様が飲食業に戻っ
てきてくれるかどうかは未知数です。
コロナ感染の影響を受けながら、今後、売上確保がで
きるかどうかという厳しい現実に直面しておられます。

損益計算書の状況は、前述したとおりですが、バラン
スシートから見える経営環境は、事業規模が1億円を
超える企業では、長期借入金が増加していることでし
ょうか。
他方、銀行預金の残高も多額になっております。
このことは、一時的にコロナ融資などを受けています
が、資金が枯渇するような経営状態にはなく、借入れ
た資金が、そのまま銀行預金に留まっているというこ
とです。
ただし、利子や元金は返済していますから、借入れた
ままの金額が残っているわけではありません。
もっとも、一部には1年間返済猶予されている借入金
もあります。

このようにみてくると私が知る限りの範囲では、売上
は減少しているが、なんとか自力でがんばりって売上
を確保しておられます。
融資(借入金)されたお金を使うような経営状態には
ありません。

コロナ化、引き続き今年の経営環境がどうなるかわか
りませんので、手元資金を厚くした状態といえるので
はないでしょうか。

個人事業主さんは、借入などされることもなく売上を
確保されていますし、むしろ法人より勢いがあるよう
に感じます。

インボイス制度をチャンスととらえてみよう!

2023年10月1日からインボイス制度が運用されます。
面倒でないほうから言えば、インボイス制度において
適格請求書発行事業者」登録を選択するかどうかは
自由です。
ただし、「適格請求書発行事業者」登録をすれば、課
税事業者として消費税を納付することになります。

消費税を納めていない事業者である「免税事業者」は、
インボイス制度から除外され「適格請求書」を発行す
ることができません。
また、適格請求書発行事業者公表サイトがあり、今後、
登録事業者の確認ができるようになります。

免税事業者と免税事業者間の取引であれば、とくに
「適格請求書発行事業者」登録をする必要はありませ
ん。

問題になる場合とは、フリーランスの方(個人事業主)
が、大手企業などの課税事業者と取引をするときです。
大手企業などが、個人事業主などの免税事業者と取引
をする場合、簡単に言えば、免税事業者分の消費税を
大手企業など(課税事業者)が負担しなければならな
くなります。
もちろん、猶予措置がありますが、それでも大手企業
などが、わざわざ面倒な手続きをおこなうとは思えま
せんし、大手企業などの課税事業者は、よほどのこと
がない限り「適格請求書発行事業者」を選択すること
になるでしょう。

そのため個人事業主でも、大手企業などの課税事業者
との取引が前提となる場合、はやめに「適格請求書発
行事業者」登録をしておくほうがよいと思われます。

免税事業に固執しているよりは積極的に自らの分野を
開拓していくほうが個人から法人へ早道となります。
個人事業主には厳しい時代ですが、その選別が、また、
次のチャンスをつくることになりそうです。

私の仕事においても個人事業主で1,000万円を超える
売上をあげる方たちは数多くいます。
その方たちは、すでに課税事業者としてビジネスをお
こなっており、大手企業などとも取引があります。

面倒なインボイス制度ですが、個人事業主としてビジ
ネスを発展させるチャンスにすることが重要ではない
でしょうか。