部門長は刑務所へ

私が在籍していたソニー子会社は、エンジニアリングの仕事がメイ
ンであり、営業部門はソニー本体に所属していました。
その営業部門を統括していた部門長は、しばしば私が在籍していた
子会社へも足を運んできていました。

私がソニー子会社を退職した時代に、この部門長もソニーを退職さ
れ、あるベンチャー企業へ社長として転職されました。
しかし、1年もたたずそのベンチャー企業を退職され、自ら起業さ
れました。
この企業は、のちに日経ベンチャー大賞を取るなど将来を有望しさ
れていたようです。
経歴も東京大学卒ですからね。

ほどなくして新聞で逮捕された、と報道がでました。
理由は、実態がない会社であり、ある大手企業から粉飾した財務報
告に基づき多額の出資を得ていたというものでした。
簡単に言えば、詐欺です。

人生、一歩間違うと、学歴などの要素にかかわらず転落するという
現実。
当然、詐欺の内容が悪質でしたから、本人は、すでに60歳前後にな
っていたように思いますが、実刑となり収監されました。

これもまた諸行無常でしょうか。

まるで部活だった時代

私が人事や総務、経理といった管理部門の仕事をはじめたのは、ソ
ニー子会社時代です。
この会社は、ソニーの業務用機器のメンテナンスやシステム設計、
施工、管理などをおこなうために設立されました。

管理部門の仕事は、企業全体にかかわるものですから、現場の仕事
内容を理解する必要があります。
年齢は36歳でも新入社員にかわりはありません。
企業全体の仕事を知らなければ、管理部門の仕事はできません。
上司は、この会社の設立にかかわったメンバーの一人だったことは
幸運でした。
メンバー仲間に技術系の方がおり、上司と懇意でした。

私は、上司にくっいて仕事していましたから、いつの間にか、この
方と話ができるようになっていました。
ありがたいことに、この先輩は、この企業の技術系の仕事に精通し
ていましたから、毎日のように職場へ押しかけて技術系の仕事内容
の勉強をさせてもらっていました。

とうとうそれでも時間が足りず、その先輩の自宅、自宅といっても
単身赴任でしたから都内にあるアパートへ泊りがけで押しかけてい
ました。
この先輩も面倒見がよいので食事を作ってくれたりと、まるで学生
時代の部活でした。
当然、朝は先輩のアパートから出社です。
妻もあきれるくらいの合宿生活でした。

このように仕事を覚えるためには貪欲さが必要です。
また、私のようにしつこいタイプに、鷹揚につきあってくれる先輩
がいてはじめて新たな仕事に取り組むことができます。

転職のむずかしさは、どのように能力があっても、転職すれば別な
企業ですから仕事を一から覚えなければなりません。
私のように能力は低くとも、転職先に有能な上司や面倒見がよい先
輩いることで仕事の能力は開発されていきます。

その意味では、転職も運が必要でしょうか。
今もお付き合いがあるこの先輩の言葉、お前は頭悪いけど、頭が柔
らかい、と。。。

転職は実験場か?

私は転職回数が相当多いですから、転職エージ
ェントなどから声がかかることがないタイプで
す。
もっとも、そのようなことを気にして生きてい
くタイプでもありません。
私の人生そのものが、実験場のようなものでし
ょうか。

その意味でも私の転職は実験場だったようです。
失敗が多い実験場でしたが。。。
それでも、面白かったの一言です。

まじかにみる経営は、生きた学びそのものです。
経営状況が悪くなる企業に共通するのは、唯我
独尊でしょうか。
井の中の蛙大海を知らず、ということです。

人間の宿命みたいなものです。
経験した以上のことは、なかなか抜け出せない
のです。
これは、私自身にも言えます。

抜け出す経営者は、人の話に耳を傾け、権限を
委譲し、実行することができる人です。
簡単なことですが、このタイプなかなかいませ
ん。

数多くの実験場を歩き回りましたが、ソニーの
ようなシンプルな経営スタイルを取ることはむ
ずかしいようです。
ほんとんどの経営者が、自分の範疇で勝負しよ
うとします。
だから、失敗するのですが。。。

それに比べると、はるかに社員のほうが優秀で
す。
ちょっとレクチャーすれば、能動的に行動する
ことができます。
実験場の中は、結構有能な社員の集まりでした。
この事実だけでも貴重な経験です。