部門長は刑務所へ

私が在籍していたソニー子会社は、エンジニアリングの仕事がメイ
ンであり、営業部門はソニー本体に所属していました。
その営業部門を統括していた部門長は、しばしば私が在籍していた
子会社へも足を運んできていました。

私がソニー子会社を退職した時代に、この部門長もソニーを退職さ
れ、あるベンチャー企業へ社長として転職されました。
しかし、1年もたたずそのベンチャー企業を退職され、自ら起業さ
れました。
この企業は、のちに日経ベンチャー大賞を取るなど将来を有望しさ
れていたようです。
経歴も東京大学卒ですからね。

ほどなくして新聞で逮捕された、と報道がでました。
理由は、実態がない会社であり、ある大手企業から粉飾した財務報
告に基づき多額の出資を得ていたというものでした。
簡単に言えば、詐欺です。

人生、一歩間違うと、学歴などの要素にかかわらず転落するという
現実。
当然、詐欺の内容が悪質でしたから、本人は、すでに60歳前後にな
っていたように思いますが、実刑となり収監されました。

これもまた諸行無常でしょうか。

くびになるパターン その一

私は、いくつかの企業でくび(解雇)になっています。
もともと、物事を明確にしたいタイプですから、どうしてもハッキ
リと口にだして言うことになります。
経営者からすれば、ずけずけものを言う嫌な人間でしょうか。
経営者もタイプがありますから、すべての経営者が私のようなタイ
プを嫌うわけではありません。
なかには、よく話を聞いてくれる経営者がいます。

それでも多くの経営者は、部下かからずけずけ言われることをここ
ろよく思うことは少ないでしょうか。
このような経営者のタイプは、くびにするというよりは、はじめに
私を遠ざけます。
口をきかない状態。
いわゆる無視するようになります。
その後、降格人事、あるいは解雇します。

このようなとき慌てないことです。
自分に軸をもつことが重要なのは、仕事の上や人生をどのように生
きるかといった大局観が必要になると思うからです。
ジタバタするより、流れにまかせる。
このようになるまでの間に、多くの齟齬がありますから、将来どの
ようになるか想像できていることも大切でしょうか。

私は、くびになっても労基署などへいきません。
すぐに次のステージを目指します。
理由は、このような環境をいつまでも引きずらいないためです。

くびになった企業やその経営者は、長い時の流れのなか、諸行無常
そのものです。

まるで部活だった時代

私が人事や総務、経理といった管理部門の仕事をはじめたのは、ソ
ニー子会社時代です。
この会社は、ソニーの業務用機器のメンテナンスやシステム設計、
施工、管理などをおこなうために設立されました。

管理部門の仕事は、企業全体にかかわるものですから、現場の仕事
内容を理解する必要があります。
年齢は36歳でも新入社員にかわりはありません。
企業全体の仕事を知らなければ、管理部門の仕事はできません。
上司は、この会社の設立にかかわったメンバーの一人だったことは
幸運でした。
メンバー仲間に技術系の方がおり、上司と懇意でした。

私は、上司にくっいて仕事していましたから、いつの間にか、この
方と話ができるようになっていました。
ありがたいことに、この先輩は、この企業の技術系の仕事に精通し
ていましたから、毎日のように職場へ押しかけて技術系の仕事内容
の勉強をさせてもらっていました。

とうとうそれでも時間が足りず、その先輩の自宅、自宅といっても
単身赴任でしたから都内にあるアパートへ泊りがけで押しかけてい
ました。
この先輩も面倒見がよいので食事を作ってくれたりと、まるで学生
時代の部活でした。
当然、朝は先輩のアパートから出社です。
妻もあきれるくらいの合宿生活でした。

このように仕事を覚えるためには貪欲さが必要です。
また、私のようにしつこいタイプに、鷹揚につきあってくれる先輩
がいてはじめて新たな仕事に取り組むことができます。

転職のむずかしさは、どのように能力があっても、転職すれば別な
企業ですから仕事を一から覚えなければなりません。
私のように能力は低くとも、転職先に有能な上司や面倒見がよい先
輩いることで仕事の能力は開発されていきます。

その意味では、転職も運が必要でしょうか。
今もお付き合いがあるこの先輩の言葉、お前は頭悪いけど、頭が柔
らかい、と。。。

管理会計があいまい?

私が在籍した企業、とくに株式上場を目指している企業では、上場の
要件として部門別の事業計画をだす必要があります。
詳しく知りたい方は、「IPOにおける予算管理制度の整備」を参照く
ださい。
私が在籍した企業では、ほとんど管理会計が曖昧でした。
これまでやったことがないのですから、わからないのは当たり前です。
問題を厳しく言えば、証券会社、監査法人などの言いなりになって上
場準備を進めてしまうことでしょうか。
ある種、IPO村的な集まりになっているので注意が必要です。

経営者がこれらの機能に従順になってしまうことです。
専門性が高いということで信頼してしまうようですが、のちに大きな
後悔をすることになります。
証券会社や監査法人などに持ち上げられますからね。
気持ちよくなるのでしょう。

上場した途端、自らの責任で管理会計を運用しなくてはなりません。
理解できている社員がいない。
勢い、企画部門や経理部門が、経営者と事業計画を作り、現場は理解
できていないまま管理会計を運用させられます。

当然ですが、現場のモチベーションがあがるはずがありません。
順序が逆なのです。
まず、部門責任者(部門経営者)を育成しなければなりません。
しかも、部門責任者が経営するということを自覚した上で、管理会計
ははじめて効果的な運用が可能です。

上場を急いだ企業は、業績不振やまともな業績開示ができなくなり、
現在、当時の企業の姿はありません。
経営者もどこへいったのか???

株式上場は後、部門経営者育成と管理会計の運用実績が先です。

管理会計はかなりやっかい?

管理会計では、利益を生み出す課や部を利益単位、いわゆるプロフィット
センターとして機能させます。
また、管理部門のような利益を出さないセクションは、コストセンターと
して把握します。

言葉では簡単ですが、実際に課や部単位で機能させるためには、例えば、
オフィスの賃貸料(家賃)は、課や部が使用する面積に応じて家賃を割り
出さなけれなりません。
また、リフレッシュコーナーなどは共通費として総務部が家賃をもつとい
った取り決めをおこないます。

総務部では、面積を割り出すためにCADで図面を引き、各課や部ごとの
家賃を試算します。
家賃に限らず、課や部別に給与、法定福利費、あるいはリース費用などを
集計して予算資料としてまとめなければなりません。
現在では、管理会計ソフトである程度のことはできますが、正確な費用を
もとめる場合、やはり詳細な検討が必要になります。
しかも、ソニー子会社時代のように課や部の統廃合が頻発すると管理会計
は大変な作業になります。
このような変更は基準日を決めて実行しますが。。。

管理会計を実施する場合、企業の運営実態、課や部の統廃合が多いのかど
うか、といった企業独自の運営状態を把握したうえで実施していかなけれ
ばなりません。

一番やっていけないことは、管理会計にしばられて企業運営の柔軟さを失
うことです。
人間は安定している状態に安心感をもつ生き物です。
事業が安定し、管理会計も順調ならいいのですが、いったん企業の発展ステ
ージを大きく変える場合など、いろいろな仕組みを改革することになります。
そのとき必ず管理会計などの変更ができません、といったエクスキューズが
でてきます。

所詮、管理のための会計の仕組みですから、事業プロセスが変わっていけば
管理会計も変更していくべきです。
なんのための管理会計かをよく理解して運用することです。

管理会計が先ではなく、常に事業あっての管理会計です。

他社から学ぶ

私がデータベースに興味をもったのは、花王の営業さんがもってい
た小型情報端末からだったような気がします。
ある小売店で花王の営業さんが情報端末に他社の販売価格を入力し
ているのをみて、なにを入力しているのですか、と質問しました。
かえってきた答えは、他社の販売価格を入力することで翌日販売促
進費がアップデートされます、と話されました。
当時はバッチ処理のため翌日になっていましたが、やはり進んだ仕
組みを取り入れていると、非常に興奮した記憶があります。

一方、私が在籍していた企業は、手書きの営業日報に同じような作
業をしていましたが、本社からまともな回答もなく、販売促進費は
おきまりの本社予算でした。
過当競争になっている業界ですから、エリアによって競合他社の販
売施策や販売代理店の販売力などの要因で価格は大きく違います。

現場の情報を吸い上げている花王と私がいた企業では、その後の成
長に雲泥の差がでるのは当然です。
当時(1980年代の中ごろ)の売上高は5000億円くらいでしょうか。
今では、1兆5000億円前後ですから。。。

情報は、みなに平等に存在します。
その平等に存在する情報をどのような切り口で獲得するかが、企業
の優劣を決めます。
花王の場合、販売促進費に限らず、他社の原価率の分析や自社の商
品の付加価値向上などあらゆる施策に情報を活用していた、と私は
想像しています。

このようにまわりにいるよい企業から多くのことを学べます。
自社の問題点ばかり指摘するよりは自ら他社のよい施策を学び、自
分のビジネス人生に活かしていくことです。
話を聞かない経営層を相手にするよりよほど自らの成長を助けてく
れます。

花王P&Gユニリーバジャパンエステーなど多くの企業から学
ばせてもらいました。
学びの機会は、自分の身近なところに存在します。

少し古いですが、花王の事例研究です。
トイレタリー市場における花王の事例研究

売上基準と経営管理

営業をやっていると売上がどの時点になるのかは、大変気になると
ころです。
私が在籍していた企業は、出荷基準で売上を計上していましたから、
たとえば6/30に出荷すれば、6月分の売上ということになります。
売上基準は、そのほか引渡基準や検収基準などがあります。

問題は販売促進費の取り扱いにありました。
当月販売したのですから当月に販促費を計上するのがあたりまえな
のですが、この会社、販促費の取り扱いが非常にあいまいでした。
経営会議にだすためか、実績を計画通り出すようないい加減なとこ
ろがありました。
販促費を予算以上に使っているのに、予算内に収める???

当然ですが、当月に計上されるべき販促費が計上されていません。
出された実績は少ない販促費になっています。
みかけ上利益が大きくなります。
簡単にいえば、粉飾です。

このような管理状態ですから、なかには数千万円の販促費が後日取
引先から請求されたりと、大問題となりました。
担当者は、時期をおかずして退職されました。

私はこのような現場をみながら同じような販促費の使い方をすると
自分の問題になると感じ、使用した販促費をすべて当月中に出すよ
うにしました。
なかには、管理職が来月にまわせといってきても頑として聞くこと
はありませんでした。
管理職を信用できないからです。

経営管理がおろそかな企業では、このようなことが日常的に、しか
も意識することなくおこなわれているから怖いのです。
特に新入社員は右も左もわかりません。
要注意です。

経営管理が徹底されていれば、企業会計から経営体制が確立されて
いますので、販売部門の暴走などをけん制できますが、他方、でき
ていない企業は、社員個人に多くの責任がのしかかってきます。

企業活動をみる目を養うために、会計制度などを学んでおくことは
重要です。
自分の身を守るためにも有効な手段です。

営業の風景が不自然

学校をでて最初に入った企業の仕事は営業でした。
いやでしたが、他に選択肢がなく、採用された企業はここだけ、営
業をやるしかありませんでした。

それでもよい先輩たちや同僚がいてなんとか、営業職をこなしてい
たでしょうか。
それでも私には、この会社の営業の景色は不自然でした。
理由は、月末の押し込み営業です。
売上が不足すると、有力な代理店などに値引きをして大口の注文を
もらうのです。
この景色が私には不自然に映るのです。

まず、頭を下げて値引きしてまで売り上げを上げるのが営業か、と
いう幻滅です。
それから販売促進費の不自然さです。
実需にならないのに代理店へ値引きして、その後、どのように販売
するのか。

押し込んでもすぐに売れる商品ならいいのですが、商品自体が競争
力がなく、押し込んでもその先の販売は私がいた企業が担当するの
です。
当然ですが、さらに販売促進費が必要になったりします。

結論から言えば、この企業(合併)も代理店(倒産・廃業)もなく
なりました。
会計上、大きな問題があると、ソニー子会社へ転職して知ることに
なります。
会計が営業活動における重要なカウンターパートナーになります。

あなたが仕事をする企業の風景は大丈夫ですか。
あたりまえの日々にこそ、真実があるからです。

マネジメント経験を伝えることはできるのか?

ソニー子会社時代のマネジメントを分析できるのか、と長く考え
ていました。
あまり例がないマネジメントスタイルですから。。。
ソニー子会社以外にお目にかかったことがないわけですから、世の
中を探しても間違いなく少数派でしょう。
中小企業には、このようなマネジメントやっているところもあるの
かもわかりません。

それにしても人に伝えるのがむずかしい。
そこで今読んでいる「失敗の本質を語る」野中 郁次郎 (著), 前田
裕之 (その他)を参考にしてみます。

リッカート は、 原因 変数 → 媒介変数 → 結果 変数 という モデル
を つくり まし た。 原因 変数 は、 小 集団 の メンバー が リーダ
ー を 支持 する 関係、 連結 ピン 組織 と 高い 目標、 媒介変数 は
上司 に対する 好意的 な 態度、 高い 信用 と 信頼、 優れ た コミュ
ニケーション、 集団 への 強い 帰属 意識 などからなり、 低い 欠勤
・転職、 高い 生産性、 少ない スクラップ、 低い 原価、 高い 収益
という 結果 を もたらし ます。   バークレー では、 米 ミシガン
大学 で リッカート の 同僚 で ある アーノルド・タンネンバウム が
客員 教授 として リッカート 理論 を 教え た の です が、 クラス
を 重複 する 小 集団 に 分け、 まさに 連結 ピン 組織 を 編成 し て
参加 型 の 授業 を 展開 し まし た。   小 集団 が 自ら 高い 目標
を 求める よう に なる と 生産性 が 高まり ます。 集団 の メンバー
を 従わ せる 力 には、 合法 力( 組織 から 公式 に 与え られ た
権限 に 基づく 力)、 報償 力( 報酬 を 与える 能力 による 力)、
強制力( 処罰 が できる 力)、 専門 力( 自己 の 持つ 専門的 な
知識 によるによる 力)、 同一 力( 一体感 に 基づく 力) が あり
ます。 この なか で 最も 範囲 が 広い のが 同一 力 です。 人間 が
他人、 集団、 規範、 役割 などに 同一性 を 認める と 拘束 さ れる
力 を 指し、 集団 の メンバー との 一体感 と 言い換え られ ます。

個人 の 友情 や 愛情、 忠誠 による 自己 統制 は 同一 力 による 統
制 で あり、 強い 拘束力 を 持ち ます。 集団 の 目標 が 自己 の 目
標 に なる ので、 目標 の 達成 に 向け て メンバー は 懸命 に 努力
し ます。 メンバー は 自発的 に 動く ので、 統制 さ れ て いる と
いう 意識 は 弱い の です。 メンバー 間 に 強い 統制 力 が 働き、
生産性 が 高まり ます。 リッカート 理論 は、 凝縮 さ れ た 集団 が
同一 力 に 基づく 統制 に従う、 理想的 な 管理 の 姿 を 示し た の
です。 タンネンバウム は、「 愛情 に 基づく 統制」 と 表現 し て
い まし た。   個人 と 個人 の 人間関係 論 では なく、 組織、 チ
ーム を ベース に し た 人間関係 論 で あり、 日本 の 実態 に 近い
内容 でし た。 組織 の 社会心理学 と 呼ん で いい でしょ う。

上記の内容に近いマネジメントがソニー子会社に存在していました。
ただし、私が在籍していた時代は、社員数は120名~300名です。
私の経験では、50名くらいから300名くらいまでが、企業が一番お
もしろい時代、玉石混交、いわば発展可能性を秘めた時代だ、と考
えています。
日本的マネジメントとは違います。
個人の独自性が尊重されるので、日本的な組織中心型(親分、子分
型)ではありません。
あえて言えば、役員から従業員までフラット型と呼んだほうが合う
のかもわかりません。

仕事は、理屈でないから面白い。
しかし、理屈を学ぶことを忘れてはなりません。
自分に酔い、溺れるからです。

権限移譲すると時間がかかる?

権限移譲すると時間がかかるか。
結論から言えば、時間がかかる場合もあれば、
かからない場合もあるというのが回答です。

権限移譲して管理会計を実施する場合、現場の
課長級は大変です。
自分の仕事をおこないながら事業計画を策定す
ることになるからです。
覚悟が必要です。
もっとも、ソニー子会社時代の課長級はみな楽
しんで事業計画を作っていました。
私も人生で一番働いたと思いますが、本当に楽
しんでやったと思います。

今書くとこうなりますが、実際やっている途中
は、締め切りとの闘いです。
権限移譲して事業計画を作ると、現場ではかな
りの時間を割くことになります。
また、課長級の負担も相当なものです。

他方、課長級が策定した事業計画が承認されれ
ば、その後の動きはすばやくなります。
当然ですが、実行者が策定した計画だからです。
毎月、課長会議で進捗報告することになります
が、これはこれで大変です。
役員から文句言われるから?

自分の能力が、衆人の前に丸見えになるからで
す。
適当な答えではぐらかしても、現場責任者がや
る会議ですから、簡単にごまかせません。
厳しい質問が、役員からでなく、まわりの責任
者(同僚)から飛んできます。

役員は、にやにやしながらだまって聞いている
だけです。
たまに質問されますが、役員への回答でも能力
はまるみえでしょうか。
タフな会議です。

私の個人的な考えですが、重要な仕事とはある
程度時間がかかるものです。
無駄な仕事はシステム化することや仕事そのも
のを廃棄する必要がありますが、事業計画や事
業の進捗には、それなりの時間が必要です。
そのためにも管理会計をおこない、事業計画を
現場サイドで策定し、実行し、そして評価する
体制が必要だと、確信しています。